分子標的薬は、がん細胞で傷ついた遺伝子からつくられる、がん細胞の異常な性質の原因となっているタンパク質を攻撃する物質や抗体(分子標的薬)を、体の外から薬として投与することによって治療します。
最近話題のニボルマブ(商品名:オプジーボ)も分子標的薬の1つです。これは免疫チェックポイント阻害剤というものです。免疫細胞であるT細胞は、本来がん細胞を攻撃しなくてはならないのですが、T細胞の表面にはPD-1というたんぱく質が出現しています。これに対し、がん細胞にはPD-L1というたんぱく質が出現します。この2つがくっつくとT細胞はがん細胞を敵だと認識しなくなり、攻撃をストップしてしまうのです。そこで、この結合をブロックする薬剤を投与してやると、再びT細胞ががん細胞を攻撃するようになります。
ただ、厄介なのは正常細胞にも、このPD-L1を出現させている細胞があるということです。むしろ、正常細胞はT細胞から攻撃されないために、PD-L1を出現させて身を守っているとも言えます。ところが、この免疫チェックポイント阻害剤を使うと正常細胞との結合も阻害してしまいますので、1割以上の確率で間質性肺炎などの自己免疫疾患(味方なのに敵だと思って免疫細胞が攻撃してしまう)が起こっています。また、PD-L1を出現させていないがん細胞もたくさんあります。