甲状腺は喉の前側の出っ張った部分、いわゆる「のどぼとけ」と呼ばれる甲状軟骨の約2~3㎝下にあります。甲状腺は蝶のような形をしており、左葉と右葉、そして2つを繋げる峡部から成り立っています。1つの葉の長さは4~5㎝、幅1~2㎝、厚さ2~3㎝、全体の重さは15~20gです。
この甲状腺に発生したしこりを「甲状腺結節」と言いますが、大きく良性と悪性の2つに分けられます。この内の悪性結節を「甲状腺がん」と呼びます。甲状腺がんは治療せずに放置すると、がんが大きくなり周辺組織に広がったり、リンパ節転移、遠隔転移を引き起こします。甲状腺に発生する結節の約5~10%が甲状腺がんと診断されます。
甲状腺がんは起因する細胞の種類、細胞の成熟状態により分類されます。起因細胞の種類による分類では、濾胞細胞に起因する乳頭がん、濾胞がん、低分化がんおよび未分化がんと、非濾胞細胞に起因する髄様がん、リンパ腫などがあります。
細胞が変化し、様々な構造と機能を持つようになることを「分化」といいますが、細胞の成熟度によって未分化、低分化、高分化などの「分化度」として分けられます。一般的に高分化ほど細胞の成熟度が高く、反対に未分化、低分化になると悪性度が高まり、未分化がんは細胞の分裂速度が速く、治療経過があまり良くないケースが多数見受けられます。
多くの場合で、特別な症状がありません。痛みがない喉のしこり以外に、症状はほぼ見られません。一部での例を挙げると、しこりが大きくなる、しこりが気道と食道を圧迫することにより呼吸困難を感じる、声が枯れる、しこりが非常に硬い、喉の痛みなどの症状が見られる事があります。
甲状腺がんの危険因子の内、現時点で立証されているものは若年時の放射線被ばくです。放射線被ばくによる甲状腺がんの大部分は乳頭がんです。
他には遺伝的要因として、家族性甲状腺がんがあります。家族性髄様がん症候群と言われ、RETという遺伝子が突然変異し、甲状腺髄様がんが発症することがあります。両親が乳頭がんや濾胞がんがある場合、子供に甲状腺がんが発生する可能性が高まると考えられています。
甲状腺がんは、手術が主な治療法として行われます。がんの部位や広がり方によって、どれほど切除するのか決められます。それと合わせて、放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)が行われることがあります。とはいえ、放射線治療や化学療法は効果が低いという見方もあります。甲状腺がんの治療では、それらの標準治療に加えて、がん先端治療であるがん遺伝子治療や免疫細胞治療の効果が期待されています。標準治療と組み合わせてがん先端治療を行っていくことで、標準治療だけでは対応できない甲状腺がんとも闘える可能性があります。