がん検診で「3」と言われた!とても動揺する状況ですね。
ところが、この数字が「クラス3」なのか「ステージ3」なのかでは、大きな違いがあります。がんについて正しく知ることは、不要な心配を増やさず前向きにがんと闘うことができます。今回は、がんについて正しく知ることで治療法選択に与える影響について説明いたします。
腫瘍ができると、がんかどうかを判断するために、採取した細胞を検査します。このときの検査結果を「クラス」で分類します。そのクラスには、1~5まであります。まず、腫瘍の状態を理解することは、正しく治療する上は必要不可欠です。
クラス1:正常
クラス2:どちらかわからないが、正常である可能性が高い
クラス3:どちらかわからない
クラス4:どちらかわからないが、がんである可能性が高い。
クラス5:がんであることを強く疑う
クラス5と判断された場合でも、そのがんの性質や進行度はさらに精密検査をしてみないとわかりません。調べてみると、悪性度(「グレード」で表される)の低いおとなしいがんで、進行も遅い、というようなこともあります。クラスはあくまでも細胞ががんである可能性を表したものなので、クラス5だったとしても手遅れとは限りません。
がんがどのくらい進んでいるのかという、がんの進行具合を表す表現として「ステージ(進行病期)」が使われます。がんのステージは、ステージ0期からⅣ期まで5段階に分けられており、ステージⅣが最も進行している(悪化した)状態です。また、がんが体の一部分にとどまっているか、広範囲に広がっているかの目安でもあります。がんのステージの分類にはさまざまな方法がありますが、「TNM分類」という、がんの大きさ(T)・リンパ節への転移の有無(N)・他の臓器への転移(M)の3つの要素で判定する方法がよく知られています。
ステージ0:がん細胞が上皮細胞内にとどまっている。リンパ節への転移もない。
ステージⅠ:がん腫瘍が少し広がっているが、筋肉層でとどまっている。
このステージまでのほとんどのがんは5年生存率(注1)が80~90%。
ステージⅡ:リンパ節への転移はないが、筋肉層を超えて広がっている。または、腫瘍は広がっていないが、リンパ節へ転移しつつある。
ステージⅢ:がん腫瘍が広がっており、リンパ節への転移もある。
手術できる限界の状況であることも少なくない。
ステージⅣ:がんが他の臓器へ転移している。
このステージでも末期がん(注2)とそうでないがんがある。
がんの種類によってステージを判定する要素が多少異なっていますので、これらはあくまで目安です。
がんのステージを把握することは、治療法を選ぶ時にも影響を与えます。同じがんの種類や状態の患者さんにどのような治療が行われ、その効果はどうだったかということをまず知ることができ、自分にとってその結果が当てはまるかどうか、同じように行うことが可能かどうかを予測するのに役立つからです。
現在のがんの進行具合を知ることで、もしかすると、がん先端治療が行えるかもしれません。詳しい、がん先端治療については、こちらからお問合わせください。
例えば胃がんの場合、ステージによって下記のように治療法を変えていくことがあります。
ステージⅠ:一部では、内視鏡治療が手術と同等の治療効果をあげている。このため、体の負担がより少ない内視鏡治療が積極的に行われている。
ステージⅢまで:手術治療が中心。
ステージⅣ:化学療法が多くの場合に行われる。状態に応じて、痛みやだるさなどの症状を和らげる治療やケアをより重点的に行う。
がんのステージが上がってくると、標準治療(注3)が体に合わなかったり、効果が出ないケースなども出てきます。治療自体が難しいものもあります。状況によって、免疫治療や遺伝子治療を含むがん先端治療、あるいはそれらと標準治療を適切に組み合わせて併用治療をおこなうことなどを検討することもできます。がんのステージや状況、患者さん自身の意向をきちんと把握して、最適な治療法を検討し選択することが大切です。
注1:ここで言う5年生存率とは、がんの治療を始めた人のうち、治療開始から5年後に生存している人の割合のことです。がんの治療効果の目安としてよく用いられています。とはいえこれには、5年の間にがんが再発したため治療を続けている人、5年の間にがん以外の病気で死亡した人も含まれています。そのため、5年生存率が“そのがんが完治する可能性”と完全に一致するというわけではありません。
注2:ここで言う末期がんとは、これ以上治療ができないと医師に判断されたがん、のとこを指しています。
注3:ここで言う標準治療とは、現時点で最善であると専門家の間で合意が得られた治療法のことです。主に手術療法・化学(薬物)療法・放射線療法を指します。