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がん手術の傷の炎症を抑える創傷被膜材を開発
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がん先端治療コラム:がん手術の傷の炎症を抑える創傷被膜材を開発

がん先端治療コラム:がん手術の傷の炎症を抑える創傷被膜材を開発

がん先端治療は日進月歩で進化していて、回復を早めたり身体の負担を抑えたりする技術が次々に登場しています。傷の炎症を抑える創傷被膜材もその1つで、2019年の7月に発表された、まさに最新の技術です。

内視鏡で噴霧可能な創傷被膜材

開発に成功したのは物質・材料研究機構のNIMSと鹿児島大で、消化器がんの治療後の傷を塞ぎ、組織の再生を促すというものです。この新しい創傷被膜材の特徴は、組織接着性の高い疎水基を化学修飾した疎水化ゼラチンをベースに、ブタ由来ゼラチンを合成し疎水化ゼラチン粒子の作成に成功したという点です。粒子はマイクロメートルサイズの球状をしていて、内視鏡用の噴霧装置を使って傷に吹き付けて使用します。

この新しい創傷被膜材の性能と効用

ブタ胃粘膜組織を使った接着試験では、市販されている被膜材の約10倍に達する性能を見せました。
疎水化していないゼラチンとの比較だと、接着強度は2倍にもなります。粒子同士に疎水性相互作用が起こり、凝集が発生してゲルフィルム構造を形成することも分かっています。ラットの全血との混合試験では、血液の凝固作用が認められました。ミニブタの胃に作製した人工潰瘍の試験でも、粒子の噴霧によって炎症が軽減されたり、狭窄の原因の粘膜下層組織の線維化が抑制されたり、さまざまな効果が発見されています。

このように、新しく誕生した創傷被膜材はがん先端治療の希望であり、今後がん治療を大きく変える可能性を秘めます。ちなみに、噴霧された疎水化ゼラチンは生体組織の修復を経て、体内で分解や吸収が進むことが確認済みです。術後に再び手術をする必要がないので、患者さんの負担が軽減されることになります。回復が早く手術の回数を減らせますから、実用化され次第、恩恵を受けられる患者さんは少なくないでしょう。内視鏡的粘膜下層剥離術のESDは、早期消化器がんの低侵襲治療で注目を集めますが、噴霧後の粘膜下層組織における炎症や狭窄が問題となっています。現在主流のシート状の創傷被膜材は、組織の接着性が低く、分解時に炎症を伴ったりするため、内視鏡で創傷部に届けるのが難しいという課題があります。その点、今回発表された新しい創傷被膜材は、生体組織に対する接着性が強く、ESD後の狭窄や出血の予防に役立つと期待されます。まだ発表されたばかりで実用段階ではありませんが、既に医療材料として応用を期待する声が集まっています。NIMSと鹿児島大の研究グループは、当面の間は前臨床試験を目指し、研究を続け準備を進める方針です。

この新技術にさらに期待できるメリット

研究が進み安全性が認められ、実用化が達成できれば、がん治療どころか、がん先端治療にも大きな影響を与え得るでしょう。治療の負担が減って回復が早まれば、患者さんの社会復帰に要する期間も短くなり、仕事にも早期で戻れるようになり、会社の負担も軽減される結果に繋がります。これは社会全体のコストが減ることを意味しますから、改めて考えると、この創傷被膜材は画期的で、経済的な効果も優れたものになる可能性があります。炎症を抑えるだけでも魅力的ですし、そのまま分解吸収されるので、噴霧後のことを考えなくても良いのがポイントです。シート状の創傷被膜材の欠点も解消されるので、一石二鳥どころかそれ以上のメリットをもたらすものとなるでしょう。

内視鏡用の噴霧装置が使えますから、新たな機器を開発する必要がなかったり、導入コストが発生しないで済んだりするのも強みです。がん先端治療は一大市場で、続々と画期的なアイディアや治療法が誕生していますが、噴霧可能な創傷被膜材も例外ではないといえます。
費用はどうなるか、保険が受けられるかなどの懸念事項はありますが、それにしても可能性や希望を感じさせるのは確かです。

市販品と比べて約10倍の接着強度を示し、単なるゼラチン粒子と比較しても約2倍の差ですから、疎水化ゼラチン粒子の開発は実に画期的です。手術の際に、出血をできるだけ抑えることはとても大切なことですが、どうしても悪いところを切除することによって傷ができてしまうものです。そうした傷をできるだけ早い回復ができるよう、治療による身体に対する負担が低く、後処理が不要で、施術もこれまでの技術の範囲で行えるようになるというのは、本当にうれしいニュースです。実用化に向けて、これから準備や手続きが行われていきますが、その進展がスムーズに行くことを願っています。

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