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新しい「がん医療」
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がん先端治療コラム:新しい「がん医療」について

がん先端治療コラム:新しい「がん医療」について

日本のがん研究は、1981年にがんが死因第1位となったことをふまえ、1984年から「対がん10ヵ年総合戦略」、1994年から「がん克服新10か年戦略」、2004年から「第3次対がん10か年総合戦略」、2014年から「がん研究10か年戦略」という形で進められてきています。現在の「がん研究10か年戦略」では、がんの本態解明や新規治療法開発などを柱としており、2019年度からの後半期間においては、さらにがん対策を進めるため、がん発生の原因や動態、有効かつ安全な治療法などの「研究」が重点的に進められています。
そして、日本で初めて2019年3月に白血病の最新治療として、遺伝子改変がん免疫療法である「CAR-T(カーティー)細胞療法」が承認されました。この治療は、患者さんの免疫細胞(T細胞)を人工的に強化して、がんへの攻撃力を高める、これまでになかった治療法です。スイスのノバルティスファーマ社が開発した療法で、高い効果が報告されています。2018年には米国、ヨーロッパで承認され、この度日本でも、標準的な治療で効果がなかった白血病の一部を対象として承認されました。

遺伝子技術を使った免疫療法「CAR-T細胞療法」とは

私たちの体にはもともと、がん細胞を攻撃・排除しようとする「免疫」というシステムが備わっています。免疫は、血液中の様々な免疫細胞が連携して働きますが、特にがん細胞を直接攻撃するのは、リンパ球のひとつであるT細胞です。
T細胞は通常、がんの目印を見つけると、そこを標的にして攻撃を行い、がん細胞を破壊しますが、この仕組みがうまく働かなくなると、がん細胞が増殖してしまいます。CAR-T細胞療法は、患者さんから採取したT細胞に遺伝子改変を行い、白血病(がん)細胞の表面に出ているCD19という目印だけを認識して攻撃するアンテナ(キメラ抗原受容体:Chimeric Antigen Receptor、CAR)を人工的にT細胞に取付け、そうした上でそのT細胞を増やし、再び体内に戻します。それにより、標的になるがん細胞への攻撃力が強化されるという治療となります。
CAR-T細胞療法はこれまでになかった画期的な治療であり、効果が期待されていますが、その一方で、患者さん一人あたりの治療費が、米国で約5,000万円となっており、非常に高額です。バイオテクノロジーの進歩で、遺伝子改変した細胞を増やすなどして製造する医薬品や治療法が増えてはいるものの、従来の薬に比べて製造工程が複雑で特殊な設備も必要となるため、製造コストが高額になるようです。
2019年3月に承認されたCAR-T細胞療法の日本での治療費については近々決定され、年内には保険診療としてる治療が受けられるようになる見込みとなっています。
高い効果を示すCAR-T細胞療法ですが、単独での治療では、一度はがん細胞が一旦検出されなくなっても、その後再発してしまうケースがあったり、CAR-T細胞療法に関連したサイトカイン放出症候群や重篤な神経障害などの副作用も報告されているようです。こうした課題を克服するための研究も進められているところです。

がん治療の最新の知見(内視鏡治療)について

現在、内視鏡によるがん治療も進歩しています。特に、早期がんに対して行われている内視鏡治療は、開腹手術に比べて入院日数が短期間ですみ、また患者さんへの負担も軽くできるため、従来の外科治療に代わる新しい治療法として注目されています。
これまで行われてきた内視鏡を使った治療法には、スネアと呼ばれる金属の輪を病変部に引っ掛け、高周波電流を流して切り取る方法(内視鏡的粘膜切除術;Endoscopic mucosal resection:EMR)や、最近では、専用の処置具を使ってより大きな病変を切り取る方法も行われるようになってきています。これは内視鏡的粘膜下層はく離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)と呼ばれています。
ESDのメリットとしては、EMRでは、一度に切り取ることができる病変がスネアの大きさ(約2cm)までと制限があるのに対し、ESDでは専用の処置具(ITナイフやフックナイフ、フラッシュナイフなどがある)を使い、従来の手法ではとりきれずに手術になっていた、範囲の広い早期ガンを安全かつ1つのブロックとして切除できるようになり、より正確な病理診断が可能になりました。しかし、デメリットとしては、従来のEMRよりも時間がかかってしまうということです。

これからの「がん医療」

冒頭で述べたように、現在、がんの本態解明や新規治療法開発などを柱とする「がん研究10か年戦略」が進んでいますが、2019年3月8日に開催された「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」において、これまで進められてきた研究は、全体として「概ね順調に進捗している」と高い評価がなされています。
しかし、がん研究が進む中では、8つの柱の「複数に関連する課題」も明らかになってきているため、有識者会議では、次のような項目について、「横断的事項」として掲げ、今後重点的に研究を進めるよう提言されました。

①がん治療のシーズ(治療法等の原点)の探索
②がんゲノム医療の研究
③免疫療法の研究
④リキッドバイオプシー(血液や尿などを検体として、低侵襲で実施するがんの診断)の研究
⑤AIなどの新たな科学技術の活用
⑥データベースなどの基盤整備
また、「製剤のコストが高い」「製剤までに時間がかかる」という課題の解決に向け、「iPS細胞の活用」「新たな遺伝子改変技術の開発」などを進めるべきであることについても提言されました。

2019年度以降、この提言内容が重視されることはもちろん、今後の日本におけるがん研究の羅針盤になっていくことでしょう。「がん医療」がこれからも発展し続け、悲しみの涙が喜びの笑顔に変わっていくことを期待したいと思います。

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